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　今回は、私家版の出版物の書評である。私家版であり、出版流通を経由しないので、一般書店での購入、Amazon等のネットでも購入はできない。鴨書店と原書房でのみ購入可能である。

　著者の木村瑛秀さんであるが、雪之静先生の５年間に渡るお弟子さんであり、最終的には師範の立場で、雪之静流の教室を任されていた断易の達人と思って良い。
　ところが、残念なことに、本書を発行した直後（２０１５年１０月）急逝された。従って本著は彼の遺作ということになる。雪之静先生の言によれば、彼の執筆に対する意欲は、鬼気迫るものがあったらしい。

　内容についてであるが、膨大な量の実占例の集合体だと思ってよい。断易を習得するには、先人の占った判断例を、いくつも読み返すことが上達する最大のポイントであり、そのためには本書は非常に有用である。

　断易そのもののルールは、著者の師範である雪之静先生の「現代断易実践」上中下三巻を熟読して身に付ければ良い。その後、本著を熟読して判断のポイントを掴み、毎日のように実占を行えば、必ず実践的能力が身につくといえる。
　
　本著の凄さは、占例が日常の些末な判断から、就職や結婚など人生の一大イベントに至るまで、非常に多岐に渡る例が掲載されていることだ。これは、研究者にとって非常に嬉しい。
　現在この内容を他著に求めるとしたなら、太玄社版の「諸口流奥義 五行易師弟問答」があるが、何分大昔の占例であるので現在の生活には合わない部分も多い。そういった意味では、現代の生活に適合した唯一の占例集といえる。

　これから断易を勉強しようという向きには、上記の「現代断易実践」上中下三巻に本著を揃えれば道具はこれで完結だ。

（注）雪之静先生の著作は東洋書院から「奥伝断易秘法上巻」という廉価な一般書も発行されているが、出版社の不作為によって下巻が未発売である。

　ここで断易研究家を対象に、雪之静流の現代断易について少々。
この流派は、断易から六獣や神殺、十二運などの付帯物を一切排除して、五行の生剋だけで吉凶判断を行う。その代わりに、卦身を重視し自分を表す第二の世爻としての扱いをしている。
また、吉凶に加えて象意を得るために爻冲爻合を重視している。